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#twnovel(41~60)


41.

物語を売る店は沢山あったが、駄菓子屋の一回五円クジが印象に残っている。当たるのはお守り大の袋に入った物語。開けたら物語が溢れてしまうのを心配した私は、押入れに作った秘密の部屋に飾った。読みもせずに眺めては、どんな物語が入っているのだろうかと想像を巡らせたものだ。


42.

長い髪を靡かせ、ワンピースを翻す少女。少女が阿と笑えば、水面が花火のように弾け、も一度阿と笑えば、空が星屑を散らす。阿阿阿と笑う少女。その後ろにいた青年が少女を抱え上げると、耳元でそっと囁いた。瞬間。水面が。空が。花々しく裂け乱れ、少女は青年の胸元で吽と泣いた。


(Twitterにて、フォロワーさんが書いてくださったイメージツイノベを真似っこして書いてみた)


43.

水瓶の中を覗き始めて幾日経つだろう。波もなく揺らぎもなく、墨を塗りたくった和紙で蓋をしてしまったような、深い静寂。手を入れれば容易いが、私はただただ覗き続ける。寂しいよ。水瓶の底にいるだろう君に、私の声は届かない。淋しいよ。溢れる涙でも、和紙の蓋は破れない。


44.

片割れなんて悲しいこと言うもんじゃないよ。割れちまったら、僕らは一生離れ離れじゃあないか。半分こだったら、離れ離れになってもくっつけば、まだ一つの僕らさ。だからもう泣くのはおよし。今夜は僕も一緒だ。


ありがとう僕。鏡に写る僕の半分を抱きしめ、僕らは一つの夢を見た。


(貴方は遥飛蓮助で『僕の半分』をお題にして140文字SSを書いてください。 http://shindanmaker.com/375517)


45.

あの子を見ているだけなのに。ふわふわ甘いものが降ってきたと思ったら、後ろからナイフで刺されたような痛みに襲われる。どうしてこんな気持ちになるんだろう。分からないよ。怖いよ。逃げなきゃ。僕があの子にとって他人の内に。


僕は一生、恋をしない。この痛みから逃げる為に。


(貴方は遥飛蓮助で『僕は一生、恋をしない。』をお題にして140文字SSを書いてください。http://shindanmaker.com/375517)


46.

削りカスまみれの心にそっと、息を吹きかける。カスは遠く遠く飛んでいき、顕になった心は歪で不格好。さてここからが腕の見せ所。尖った部分をヤスリでザリザリ。削りすぎた部分を毛布でスリスリ。削りに徹した間、身に付けた心の鍛え方、労り方。


私なりの、心の作り方。


47.

本日モ感度良好ナリ。ハートの形のパラボラアンテナ。楽しいこと素敵なこと受信中。しかしおやおや。ぽろぽろ涙の電波を受信。悲しい痛い辛い辛い。こんなの受信したくない。受信拒否を訴えて。泣いて泣いて訴えて。アンテナ抱きしめ誰かが言う。綺麗な心と、誰かが言う。


48.

「結婚しようか」彼の一言を自宅まで持って帰ったところまでは覚えているけど、まさか玄関で泣き疲れて寝てしまうなんて。ねぇ、またふざけてるんでしょ?いつもみたいに冗談だと言って欲しかったのに、昨日に限ってなんであんな真剣な顔で言ったの?狡い。狡い狡い狡い。私ばかり心乱されて、狡い。


(#リプきたセリフ使って140字SS書く/「結婚しようか」)


49.

「かえりたい」もう帰ってるじゃん、と僕が言うと、寒がりな彼女は炬燵の中で身を縮ませ「根本的な所に」と言った。「還りたい?」「そうそれ」「還ってどうすんの」「コタツムリとして生まれ変わり、温暖地域を目指して旅に出る」そりゃ酷いな。僕の家が彼女の家になってようやく一年経つのに。


(#リプきたセリフ使って140字SS書く/「かえりたい」)


50.

「不吉なことを言うな」一蹴するとはこのことらしい。俺は負けじと食い下がる。「いや、不吉とかじゃなくてマジな話なんだって」「ありえん。私は信じぬぞ。竹の花が咲いたとて信じぬ」時代がかった言葉遣いで頭を抱えた。「フライドポテトがSサイズのみになったことなど私は信じぬぞ!」信じろよ。


(#リプきたセリフ使って140字SS書く/「不吉なことを言うな」)


51.

月が口の中に飛び込んだ。大玉の飴くらいの月を舌で転がしたり歯で噛んでみても、味までは飴じゃない。いかがかしら?感想を求める美女。まるでプラスチックだ。ぬるくて不味い。舌を出すと、彼女が手鏡を取り出して舌を写した。僕の舌で、兎と蟹が仲良く飴玉を頬張っていた。


52.

この息苦しさは。この息苦しさはなんだ。吸い込んだ息が肺を拒否して逃げ出してしまう。憂鬱の文字が胸につっかえて苦しい。苦しいんだ。怖いんだ。まるで深海だ。怖いよ。深くて、底なしで、暗い自分が怖いよ。


底があれば這い上がるよ。底があれば、ね。


53.

世界の終わりを妄想する。地球に座り、膝を抱えて目を閉じて。頬を熱く撫でる太陽。瞼の裏を照らす月。地球の崩れる音が耳元で囁く。おやすみなさい。目を開けると、君の膝枕で眠っていた僕。首を傾げる君に笑って。「世界の終わりを妄想したら、君に会いたくなった」


(#あなたの言葉に続きを考える/世界の終わりを妄想する。)


54.

幸せになんて興味ないって、昔は格好付けて言ったもんさ。インタビュアーに答えた彼の目尻に、かつての銀幕スターにはない皺が寄る。「今はどうですか」「言えないね。僕に興味を持ってくれた幸せに怒られるもの」彼の幸せは今、写真立ての中で静かに微笑んでいる。


(#あなたの言葉に続きを考える/幸せになんて興味ない)


55.

昼にフォークダンス大会があるって聞いて来てみりゃ。なんだ、いつもの盆踊り大会じゃねぇか。「民族舞踊で言えば、盆踊りもフォークダンスだからな。慰霊祭じゃ洒落っ気ないだろ?」んなこと知るか。こちとらウチの奴の踊ってるとこ思い出しちまって、目から変な汗が出て大変なんだよ。


(#この書き出しいかがですか/昼にフォーク)


56.

泣いた赤鬼に豆を差し出すと、差し出した手ごと払われた。「ばっかじゃないの!?鬼のあたしがそんなの食べるわけないでしょ!最低でも春野菜の地中海風サラダと猪のステーキと、あ、焼き加減はミディアムね!デザートは杏仁豆腐とあんみつとそれから」やれやれ、注文の多い赤鬼だ。


57.

私の「はじめてのチュウ」を、あなたは知らない。お泊り会の夜。私の隣で熟睡するあなたがいた。告白を「ありがとう」で返したあなたの上に跨って、あなたの唇に自分の唇を押し付けた。マシュマロより柔らかい感触は朝まで残った。はじめてのチュウが、さいごのチュウになった。


(#140ss書くためのお題ください/はじめてのチュウ)


58.

同じリフィルに入った黒と赤は仕事で大活躍。青の自分は手帳に出勤日を記すだけ。こんなの不公平だ。「じゃあ、私を物語の世界に連れてって?」それ以来、私の物語は青一色。青が書き手の私を先導してくれるからだ。私の大好きな色。今日はどんな物語に連れてってくれるの?


59.

クーピーを削る彼女は、ウチのもったいないおばけだ。でももったいないなら削らなければ良いのに。「削った分だけ綺麗に塗れたら、この子達も報われるでしょ?」僕は一本のクーピーを差し出した。この方が報われるよ。カラフルなクーピー。また彼女の子供のように愛されておくれ。


60.

「間違えてしまった言葉を潰したいなら、同じ言葉を重ねれば良い」と知ってから、間違えたら二重線ではなく、同じ言葉を重ねて潰すようにした。でもこれだけは潰れないね。


好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き……あと何回重ねたら、この言葉は潰れるの?